鈴倉温『4号室のアトリエ』の感想 – 画学生+BL

Dirk RöpertによるPixabayからの画像
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あらすじ

画学生の結崎は、アパートのお隣さん・五嶋になにかと助けてもらっている。

彼は口は悪いが、お腹を空かせた結崎にご飯を食べさせてくれるいい人だ。

「隙がありすぎ。もっと警戒心をもて」

なんて叱られても、ちょっと嬉しい。

それに-もっと五嶋さんに触りたい。

わき上がるこの気持ちって、なんなのかな?

鈴倉温『4号室のアトリエ』

物語の中心となるのは、画学生の結崎とアパートのお隣さん・五嶋。

結崎は20歳の「俗にいう貧乏画学生」
美容室に行くお金を惜しんで、髪を自分で切った結果、ちょっと不思議な髪型になってしまったり、度が合わない眼鏡を掛けていたりと、ある意味不器用なところがあって放っておけないタイプ。

アパートの隣室に暮らす五嶋は恐らく社会人。
ある時、結崎の部屋に怒鳴り込んできます。
…といっても、言葉のあやなのですが、まあ詳しくは作中で。

第一印象は少し乱暴で口の悪い人。
でも、もちろんそれが全てではなくて、その背景や本当の性格はストーリーが進んでいくうちにわかってきます。

物語は、画学生・結崎が卒業制作を進めていく過程の話。

芸術家が主人公の物語では、その作品ができあがるまでの紆余曲折が描かれることが多いですが、『4号室のアトリエ』ではどちらかというと画学生の現実的な側面に焦点があてられています。

たとえば、

  • 作品を保管する場所をどう確保するか?
  • 保管場所を借りるためのお金をどうやって調達するか?

みたいなこと。

漫画等ではあまり取り上げられない画学生の実生活を垣間見ているようで面白いです。

感想

アートを題材にした作品の面白さ

美術や音楽など、アートを題材にした作品っていいですよね。
私個人の趣味かもしれませんが、スポーツ漫画がメジャーであるようにアート漫画というジャンルももっと盛り上がってもいいと思います。

少しメタな話ではありますが、漫画も一つのアート。
アーティストがアーティストの物語を描くと、フィクションであってもリアルな部分があらわれてくるのではないかと思っています。

私は美術の世界には疎いのですが、この作品では、画材の名称など、聞いたことのない用語が出てきてワクワクしました。
憧れはあっても足を踏み入れるには敷居の高い芸大での生活を、漫画のなかでみることができるのは良いものですね。

あらすじにも書きましたが、この『4号室のアトリエ』では、芸術作品ができあがるまでの過程というよりも、むしろ芸術作品をめぐる現実的な側面に焦点があてられています。

絵を描くにもお金がかかる。芸術作品もお金で取引される。
切り離したくても切り離せない、アートをめぐる現実的な課題がこの作品を面白くしています。

謎の多いお隣さん・五嶋の魅力

画学生・結崎のお隣さんである五嶋。

謎の多い人物です。
結崎が部屋でキャンバス張りの作業をしていると「やかましい!!」と怒鳴り込んでくる。

でもどこか優しくて、キャンバス張りを手際良く手伝ってくれる。
…一体、何者?

五嶋は自分自身のことをなかなか語らないので、物語の終盤になるまでその人物像がつかめません。
結崎に強く当たることもありますが、それにも理由があるんですよね…

そして、五嶋の人物像が浮かび上がってくるにつれて、結崎と五嶋の関係も変化していきます。
この作品を読めば、その過程を楽しむことができると思います。

表紙のふわっとした雰囲気に反して、ストーリーにはしっかりとした重みがあって、かと思えばほっと和む展開もあったりして…
緩急を楽しむことができる作品です。


絵が好きな方、アートに関心のある方はきっと気に入っていただけると思います。
ぜひお手にとってみてください!

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この記事を書いた人

属性にとらわれず、自分らしく生きる道を選びました。

音楽やメイクを嗜みます。

ジェンダーレス志向です。
多様性が認められる世の中になることを願っています。

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