あらすじ
書店員の伊織は、地味で垢抜けないことがコンプレックス。
海行リリ『純情書店』
しかし、必ず伊織のレジに並ぶ装丁デザイナーの工藤に
「初めて会ったとき、一目見て好きになった」と突然告白され、お試しで付き合い始めることに。
大人でお洒落な工藤とのデートはドキドキしっぱなしで、
最初は戸惑っていた伊織も次第に気持ちが揺れ始め……。
感想
書店って良いですよね
書店って良いですよね。
本が好きな方ならば、きっとわかってくださることでしょう。
あの落ち着く雰囲気。
気持ちが少し沈んでいるときも、ふらっと書店に立ち寄って、たくさんの本の前に立つと穏やかな気持ちになってきます。
書店での出会いってロマンがありますよね。
あの、同じ本を狙っていた2人が偶然手がふれあうベタなシーンとか。
(あれは図書館でしたか……?)
今回ピックアップする作品『純情書店』は、書店を舞台にした物語です。
書店員とお客さん
本棚で偶然手がふれあうくだりは、お客さん同士の出会いのシーンですが、『純情書店』は書店員とお客さんの物語です。
書店員の伊織は、地味で垢抜けないことがコンプレックス。
海行リリ『純情書店』
しかし、必ず伊織のレジに並ぶ装丁デザイナーの工藤に
「初めて会ったとき、一目見て好きになった」と突然告白され、お試しで付き合い始めることに。
他のレジが空いているにも関わらず、必ず同じレジに並ぶお客さん。
これは何かがあるに違いない、と思ったら何かがあって、そして始まっていきます。
垢抜けない伊織とお洒落な工藤
物語の主人公は、書店員の伊織と客として書店を訪れていた工藤。
伊織はどこか垢抜けない感じ。
工藤は装丁デザイナーという職業柄もあってか大人でお洒落な雰囲気です。
このふたりの対照的なところが、物語の魅力を高めています。
なんといっても、伊織がとても純粋で可愛らしいんです。
とはいえ、本人は、自分の「ぱっとしない感じ」にコンプレックスを抱いています……
都会ってみんなすごく華やかだもん
海行リリ『純情書店』
上京して二ヶ月 たぶん馴染めてません
俺なんか地味すぎて透明人間みたいなんだ
自分自身をそんな風に思っているのもあって、お洒落な工藤からアプローチされているかも?という話になったときには、
俺こんなにぱっとしないのに…?
そんなのありえないと思う…
海行リリ『純情書店』
と考えてしまいます。
他人からみた自分と、自分からみた自分自身の捉え方は必ずしも一致しないものですね。
自分に自信をもてない伊織が、工藤との関わりのなかで、どのように変わっていくのかはこの作品の見どころです。
スマートにみえても悩みはある
「大人でお洒落」に見える工藤も、全く悩みがないわけではありません。
物語のなかでは、工藤の悩みも垣間見ることができます。
工藤は伊織よりも年上。スマートに振る舞うことは多くても、隠し切れない弱さもあります。
それもまた人間らしくて魅力的なところ。
工藤が伊織を支えているような構図にみえて、時には伊織の素朴で純粋なところが工藤に気づきを与えることもあります。
一方向ではないこの関係が、とても素敵です。
本が好きならきっと気に入るシーン
『純情書店』は、書店を舞台にした作品だけあって、本に関する台詞がよく出てきます。
一部を抜粋します。
あのお客さんが買っていった本だ
こんな隅っこに置いてあるのだったんだ 見つけてもらえてよかったね…俺も読んでみようかな? この作家さんのファンなのかな?
海行リリ『純情書店』
それとも何か特別惹かれるところが?
…どうしてなのか知りたいな
工藤が買っていった本を手にとって、伊織はいろいろと考えてみています。
本を手がかりに、その人のことを想像してみる……とてもロマンチックなシーンです。
このほかにも、本に関する話、本を媒介にした物語の展開がみられます。
タイトルに違わず、物語の端々にキーアイテムとしての「本」が配置されています。
本が好きな方はきっと気に入るはずです。
まとめ
居心地の良い書店の雰囲気のように、ほっとした気持ちになれる作品です。
本が好きな方、書店の雰囲気が好きな方はぜひお手にとってみてください!
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